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プロローグはこちら https://www.pixiv.net/fanbox/creator/355065/post/418529

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破滅願望   原作:M月  イラスト:朝凪  制作:fatalpulse


9話 ご主人さま

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 バルガスに軽々抱えられたセラが、ベッドの上に放り投げられて尻餅をついた。


「くッ…………」


 完全に麻薬で狂わされた自分がこれから何をされるか理解し、バルガスから少しでも逃れるようにずりずりと後退するも、すぐに背が壁にぶつかった。

 

「今すぐリア様を解放して下さい……貴方は、誰に何をしているのか理解しているのですか……!」


 あろうことか拷問などという仕打ちを受けているというリアの身を案じるセラ。


 それはリアの望む行為ではないはずだ。

 性的な羞恥、辱めであれば喜んで受け入れそうだが、ただの純粋な苦痛は恐らく彼女の性癖ではない。

 

 そしてそれは、セラも同様である。リア自らが望んだ痴態であれば何をしてでも鑑賞してみせるという気構えこそあれど、望まぬ苦痛に喘ぐ主の姿など、絶対に見たくはない。身体さえ万全であれば、即座にリアを救出していたであろう。

 

 ──そのとき、背筋が興奮でぞくりと痺れた。

 心身ともに摩耗しているセラは、それが麻薬によるものだと信じて疑わない。


 肉体から発せられる気だるさと苦痛の悲鳴を押し殺しながら、バルガスを睨むセラ。

 常人であれば正気ではいられない程の苦悶の中それを極力悟らせないセラの精神力は、並外れていると言っていい。

 

 短期間とはいえ過剰な量の麻薬を注入された肉体は、とうに異常をきたしている。

 

 バルガスの部下達が揶揄したように、セラは既に重度の麻薬中毒となってしまっていた。セラが望んでいようが望んでいまいが関係なく、肉体は常に麻薬を求め続けるのだ。


 一週間もの間、麻薬の快楽と同時にひっきりなしに加えられた性的悦楽。普通の女性なら確実に廃人になるであろうそのシャブ漬けセックスは、気丈な振る舞いをしているものの、セラの精神を確実に蝕んでいた。

 

「ふん……俺の飼っているペットの雌豚に躾を施しているだけだろう。それに何か問題があるか?」


 セラは、禁断症状の苦痛に苛まれて朦朧とする意識の中、バルガスが木箱から取り出した注射器を視界に入れた。

 それが何かを理解した瞬間、セラの口からは期待の涎が垂れ、シーツに糸を引いた。


「あ…………♡ うぅ…………♡!」

 

 セラの身体がカタカタと震え、脂汗が更に増して、額に浮かんでいく。

 

「問題がないことを認めて俺に懇願するのであれば、貴様にこれをくれてやるがどうする?」

 

「…………うぐッ…………! そんなもの、い、いりません…………!」


「そうか」


 そのやり取りに反して、バルガスはこれから注射をするかのような素振りを見せる。セラの左腕を取って針先を近づけた。

 脂汗を浮かばせながら興奮に息を荒げるセラは、口で拒否をしたにも関わらず全く抵抗しようとしていない。

 それどころか一週間のシャブ漬けセックスで薬=セックスと刷り込まれた身体は、無意識でくちゅくちゅと太ももを音を立てて擦り合わせている。


「あ…………う、な、何を…………する気ですか…………ッ」


 自らの無様な様を自覚出来ぬまま、口だけは達者なセラをバルガスは哀れみの目で嗤いながら提案する。

 

「お前の言葉を試してやる。このまま……そうだな、三十分も我慢することができれば、言うとおりあのメス豚への折檻はやめさせてやろう。その間の時間は諦めてもらうがな」


「…………。いい、でしょう……その言葉、お忘れ、なきように」


 セラはバルガスには一切視線を向けず、ただ針を注視しながらそう言った。

 その口元からは拭わないまま、餌を前にした犬のように涎がたれ続けている。






 バルガスはそんなセラを愉快そうに眺めながら距離を置き椅子に腰掛ける。


 心身ともにリアを虜にせしめたバルガスであったが、本質は何も変わらぬ卑小な男だった。

 

 一度セラを犯した際に自分には御せない女、勝てない相手であると本能的に理解してしまったのだ。

 リアや侍女を狂わせた媚薬すら用いて犯したはずが、これまでの女とは全く違う反応を見せたどころか、以前のリアと全く同質の「あの見下した視線」を向けてさえ見せた。

 トラウマとも言えるその視線を向けられたとき、当然バルガスは激昂した。

 

 殺そうと思えば、簡単に殺せるだろう。だがそれをしたら一生、あの虫でも見るかのような目線が、頭から消えないことをバルガスは知っている。

 譲れぬプライドはある。なんとしてもこの端女を屈服させなくてはいけない。

 

 だというのに、麻薬漬けにしても、拷問をしても、四肢を切断しても、忌むべき視線をいつまでも辞めないメイドの姿を、その妄執を、振り払うことができなかった。だから、部下にセラの調教を丸投げすることで、逃げた。


 しかし──蓋を開けてみれば、彼が恐れた姿はそこにはなかった。

 苦痛に耐えようとする素振りを見せながらも、この期に及んで主を気にかけるその精神力には感嘆こそすれど──

 ここにいるのはただの弱いただの雌だと、バルガスの本能が告げていた。

 

「なるほど、偉そうな口を叩くだけあって、随分と我慢強いようだ」


 数分ごしにバルガスが口を開くと、セラはびくりと身体を震わした。

 

「……と、当然です……。さあ、約束通り、リア様を、解放してください……!」


 からかわれたことにも気がついていない。

 対するバルガスは、予想していなかったその言葉に訝しんだ。

 

「……なに?」


 元より約束を守るつもりなどない上にそもそも三十分も待つつもりがなかったが、体感で五分も経っていない。これが十五分、二十分程度であれば笑いながら馬鹿にしてやるところだが、経過時間のあまりの短さに一瞬意図を測りかねてしまう。

 

「なんですか…………? 貴方が、言ったことでしょう…………今更、反故にするとは言わせません」

 

 だが、何のことはない。セラは本気で、三十分程度は経過したと考えていた。

 禁断症状を堪え続ける肉体は、先ほどリアを案じたことすら遠い過去として感じるほどに時間感覚は大きく狂っていた。

 

 錯覚とはいえそれほど長い間耐えていたということでもあるが、しかしバルガスの目には滑稽としか映らない。

 

「はッ……まだ五分も経っていないぞ、端女。そんなにこれが欲しかったのか?」


 手元で注射器を弄びながら嘲笑する。


「な、何を……馬鹿なことを…………!」


 そして本気で狼狽するセラ。疑ってしかるべき男の言葉すらそのまま受け入れてしまう。というよりも、それしかできないのだ。

 自分が間違っているのかそれとも相手が嘘をついているのか、そのどちらか判断ができない、という話ではなく、そもそもそこに思考が至らない。

 

 セラはもはや、限界だった。


「馬鹿は貴様だ。あと二十五分、せいぜい耐えるんだな」







 死刑宣告にも等しいバルガスの言葉。

 それは今のセラにとって、気が遠くなりそうな時間だった。ごくりと唾を飲みこむ。


「ま、待ってください…………」


 ピクリと、バルガスの眉が僅かに動く。

 

「ほう、何を待てというのだ?」


「そ、それを、注射しても、構いません」


 境界線を──超えてしまった。


 これはリア様への裏切りではない。そうだ、少しばかり乱暴に扱われても、あの方であれば、むしろ喜ぶ可能性もある。

 拷問というのが、何をされているかはわからないが──

 

 セラは気付かない。

 麻薬欲しさに裏切ってしまったことに目を背けようとしている自分。

 

 その裏に、最も自分が隠したかった醜い醜い欲望がどろりと蠢きはじめていることに。

 

「くく……笑わせるなよ、端女。『注射しても構わない』だと? 次に口の利き方を間違えたら、このまま放り出すぞ」


「…………も、申し訳、ありません…………。どうか、私にその薬を、打ってください…………」


「それはあのメス豚がどうなっても構わないということだな?」


 セラは、自身を正当化することすら考えずに即答した。


「は、はい…………リア様を好きにしてくださって、構いませんから…………早く…………ッ」


 とうとう決定的な言葉を口にしてしまうセラ。


「あ…………あぁ…………」


 そんな自分に、苦痛とも歓喜とも絶望ともとれる呻きを発するセラ。

 

「くくく……では、お望み通りくれてやろう」


 針が、ちくりと侵入する。

 麻薬が注入されるその直前、セラは瞬間的にこれまでの自身の発言とその醜態を思い返しながら──

 

「────ッ…………」

 

 次の瞬間になだれ込んできた快楽に、全てを消し去られた。


 ぐるんと視界が真っ白になる。

 激流のように全身と脳を駆け巡る桁外れの快感に酩酊するセラ。


「…………お、…………おッ…………」

 

 頭も自重でダランと下がり、口元からは異質と言えるほどの量の涎がこぼれ出していた。最後まで途切れずに、綺麗に一本の筋が数秒ほども口から溢れ続け、ベッドを汚す。

 

「あぁぁ…………、ぁあ…………♡」


 脱力し、びくびくと小刻みに痙攣しながらその幸福感にひたすら酔いしれる。

 

 バルガスが、セラの足を引きずり倒した。

 壁に背を預けていた格好から足を引きずられて身体が倒され、天井を見上げる形となる。

 

「さて…………」

 

 バルガスが覆いかぶさり、いきり立った肉棒をセラの秘裂に押し付けた。

 既にぐちょぐちょに濡れている。


「あぁぁっ…………♡ ……リア様……リア様……リア様ぁ……♡」


 だがセラは、目は虚ろで焦点を合わせず、ひたすら主の名を呟きはじめる。

 セラが麻薬の力に屈してしまった最大の理由が、ここにあった。

 

 極限まで高揚し躁状態を強制させられている精神が見せる、幸せな幻覚。

 リアが微笑む。セラだけに、微笑んでくれる。

 

「ああ、可愛いリア様…………♡」


 次の瞬間、それが壊れた。リアが男達に群がられて、服を剥かれ、犯されている。次第にリアの顔が、悦びに染まっていく。

 

「あぁぁぁ…………♡ くふ、くふふふふふ……♡ おいたわしい……リア様……だめですよ……あなたは……そんな男に、汚されてはいけないのです……♡」

 

 涎を垂らし、びくんびくんと幸せな幻想をするセラ。

 セラはリアに絶対の忠誠を誓っている。何かがあれば、この命を投げ捨ててでもリアを助ける。そこに一切の嘘はない。

 

 けれど。幼少期に歪められたセラの心が、大切であるはずのリアが汚される姿を見たがってしまっているのも、また事実。

 その矛盾を、セラは、リア自身が望んでいることなのだという最大の盾に守られることで両立していた。

 

「……違うわ、セラ。自分の心に嘘をついてはダメ」


 幻覚が見せるリアが、セラに微笑んだ。

 セラは嬉しそうにリアに微笑み返す。

 

「あぁぁ……申し訳ありません……私はリア様が男に汚され、悦ぶ可愛らしい姿がどうしても見たいのです……♡」

 

「だから、違うわ」


 そんな戯言を、リアが一刀のもとに切り捨てた。


「え──」


「もしも私が乱れる姿が見たいだけだと言うのなら、どうして貴女は、私が拷問される姿を想像して興奮していたの?」


「────ッ!?」


 予想だにしていなかった言葉。

 そのとき、麻薬によって感じていた幸福感が、いとも簡単に反転した。


 ここ一週間見せられ続けた幻覚には言われたことのなかった言葉だった。

 

 ──何を言っているんだ、リア様は。いや、違う。これは自分が見せる幻覚。リアの言葉ではない。耳を貸してはいけない。自分のことが大嫌いな私が、自分を傷つけるための言葉を放っているだけ。

 

 リアが、その可憐な肌を余すことなく晒したまま、セラの頭上に立っていた。

 

 幻覚。そう、幻覚のリアが。

 

「目を背けては駄目。貴女が興奮していたことは、事実よね?」


 リアがしゃがみこみ、セラの目前まで顔が迫る。


「うっ……うぐぅぅ……どうして、そんな酷いことをいうのですか……ッリア様……私は……リア様のためにッ……」


「私のせいにしないで」


「…………ッ」


「認めなさい、セラ。貴女は、私が拷問される姿を想像して、興奮していたの」


「ち、ちが……違う……そんなことは、ありません……私は、リア様を……リア様のためなら、死んでも……!」


「うん……そうね、セラ。貴女は私のことが大好き。だからこそ、貴女と同じ目にあって欲しかったんでしょう? 大切な人間だからこそ、自分と同じ目にあってほしかった」


 心臓が抉られるような感覚だった。

 

「ち、違います……ッ!!」


「いいえ違わない。貴女は口では私のことが大切だなんて言っておきながら、内心でひどい目に合ってしまえと願っている、最低な人間なの」

 

「あぁぁああああああぁぁぁ……ッ!! 違う、違う、違うううぅぅうううう……ッ!!!」


 いつの間にか、感じていた強烈な高揚感は消え失せていた。

 セラは涙を流しながら、叫び、否定する。


「なら、貴女が私の姿を覗きながらずっと自分で慰めていたのは、どうして?」


「それはッ……私がリア様の、可愛らしい痴態を見て興奮してしまう、変態だからッ……」


「まだ自分に嘘をつくの? じゃあ、私が全く望んでいなかったら、貴女はどうしていたの?」


「そんなことッ……! もちろん、お守りしていたに決まっています……ッ!!」


「本当に? 痛がって、苦しんで、涙を流しながら貴女に助けを求める私の姿が見れなくなってでも、助けてくれていたの?」


「あ、あたっ、あたり前……ッ」


 ──脳裏に、言われた通りのリアの姿が浮かび上がった。

 

『いやぁああああッ!! 痛い、痛いよぉッ……助けてッ……セラ、セラぁ……ッ!!』


 ──ぞくり。

 

「あ、あぁぁぁぁ……ちが、ちが…………ッ」


 リアが、微笑んだ。


「いいのよ。私は責めたりしないわ。私にも醜い欲望があったように、セラにもそれがあるというだけの話。むしろ私はね、セラにも正直になってほしいのよ」


「あぁぁ……リア様……リア様…………!」


「大丈夫よ。私は何があっても貴女を嫌ったりしないわ。むしろセラと一緒。

 お父様もお母様のことも大事に想っているけれど──私はセラのことが、一番大切なの。お父様よりも、お母様よりも大好きなのよ」

 

 セラの目が、見開いた。

 

「あ、あ、あ、あ…………ほ、ほんっ……ほっ……」


「本当よ、セラ。こんなこと恥ずかしくて普段は言えないけれど、貴女は私にとってかけがえのない、一番大切な人」


「…………ああ、あ、あぁぁぁぁ…………」


 セラが顔をくしゃくしゃに歪めて、涙をながした。


「リア様…………リア様ぁぁぁぁぁ…………ッ」

 

「ふふ、セラ、可愛い……」


 リアが頭上から、両手をセラの頬に優しく添える。

 

「──だから、認めて? 貴女は私が、ひどい目に……昔の自分と同じ目に、あってほしかった。それが見たくて、仕方が無かった。そうよね?」


「ああああ……そうです……ひぐっ、その、とおりです……私はみにくい人間です……申し訳ありませんっ……!! 申し訳ありませんッ、リアさまぁぁッ……!!」


「大丈夫よセラ。私は何があっても貴女のことが大好きよ」


「リア様……リア様……うぅぅううううう……リアさまぁ……」


「でも、まだ足りない」


 時間が停止した。

 

 全ての心の内が暴かれたセラは、これ以上の心当たりはない。

 これ以上、リアを裏切るような隠し事など、ありはしないのだ。

 

「ううん、裏切っているんじゃないわ。むしろ逆よ。セラは優しいから……本当の意味で、私がひどい目に合っているのを見たがっているわけじゃないの」


「え…………?」


 リアの言っていることがよくわからない。

 それは買いかぶりだ。私はそういう醜い人間なのだと、セラが自分を責める。

 

「落ち着いて、セラ……貴女の心が無意識に閉ざしているだけで、むしろこれは貴女にとっては嬉しいことのはずなの」


「リア様……何を……?」


 すっかり目を腫らして、涙を流し続けるセラが、純粋に問う。


「貴女はね、セラ……私に、自分の姿を映しているだけ。自分がされたいことを見て、興奮していただけなのよ」


「え……」


 それは違う。その言葉は、セラの心には響かない。セラはリアのことを絶対的な存在だと思っているが、しかしこれについては明らかに間違っている。

 自分はただ、主のリアが苦しむのを見て喜んでしまう異常者なのだと、自分を卑下して疑わない。

 

 そうだ、リアを鏡として自分の性癖を満たしていたなんて、そんなことは欠片もない。これは心の底からの本心だ。

 だって自分は、リアのようなマゾヒストではないのだから。

 

 その証拠に、バルガスに犯されたときも、その後、部下に輪姦されたときも、身体こそ快感を得てしまったものの、心が満たされることなどありはしなかった。

 満たされていたのは、ただ、こうしてリアの幻覚を魅せられていたときだけ。

 

「それはね……セラが望むものと、少しだけ違ってしまっていただけなの。

 私は私に絶対の自信を持っているからこそ、ただクズな男に犯されれただけで満足できる。

 でも、セラ、貴女はそうじゃないもの。向いている方向が違う。

 それを、貴女が自覚できないのも無理はないわ…………無意識に、心を無理やり閉ざしてしまっているのだから。でも、今こそ思い出してほしいの…………。

 さあ、これを見て」


 セラの視界の横の、ベッドの脇の空間が歪む。次の瞬間──

 

 記憶にもっとも古い主人が、姿を現した。

 

「────ッッッ!?!?」


 セラにとっての、恐怖と暴力の象徴。絶対に逆らってはいけない存在。

 強烈に湧き上がる恐れに、セラの身体が縛り付いた。

 

「あ……あぁぁぁ…………」


 カタカタと強制的に身体が震えだす。

 

 いまだに、克服できていなかったというのか。

 今の自分は、既に目の前の男よりも強いはずだ。こんな男、その気になれば秒殺できるほどの力を持っているはず。

 

 だというのに。

 

 震えが止まらずに、一刻も早くこの場から逃げ出したがっている。

 いや、違う。それすらも恐れている。許可なく逃げてご主人様の逆鱗に触れてしまったらどうするのか。

 そうだ、このまま大人しくしてどんな命令もいなくては受け入れなければいけない。

 

「ごめんね、セラ……この男は、あなたにとっての忌まわしい過去そのもの。

 身体に刻みつけられたトラウマは、そう簡単には消えはしないでしょう?

 セラ、貴女は今、怖くて怖くて仕方がない」

 

「あ、あぁぁぁ……リア様ぁ…………」


 歯をガチガチと鳴らして、リアを見る、けれどそこには、リアの姿はなかった。

 狭い空間に、目の前の男と二人きり。

 

「ひぃ、ひぃぃぃぃ……ッ」


 恐怖でどうにかなってしまいそうだった。


 でも、身体は仰向けのまま、動かない。

 男が、ゆっくりと近づいてきた。

 

「あ、あぁぁぁぁ……ち、違うんです、ご主人様ッ……私は、ご主人様に逆らうつもりなんて……ッ! ああ、でも、リア様は……ッ!! リア様だけは、許してくださいッ!! リア様はなにも悪くないんです……!!」


「落ち着いて、セラ」


 いなくなったと思っていた、リアの言葉が響いた。

 

「ああっ……リア様……リア様っ……」


 なんとか首だけを動かして、最愛の主を探す。だがやはり、どこにもその姿は見当たらない。

 

 男が近づいてくる。

 

「ひぃいいい……っ!!」

 

 セラが震えあがった、その時だった。

 

 

 ──くちゅり。

 

 そんな音が、鳴り響いた。

 いつの間にかセラの足元に移動していたリアが、セラの秘部に触れたのだ。

 

「あ……り、リア様……?」


 安堵するセラ。

 

「濡れているわ、セラ。そんなにこの男に、犯されたかったの?」


「え……?」


 なにを言って……?

 セラの愛液を指ですくったリアが、妖しく口に含んだ。

 

「セラはいつもこの男を見て、興奮していたのよね。そう、お城の庭でこの男に出会ったあのときすらも」


「……な、なにを……私は、薬で、初めから……あのときだって、興奮なんてしていません…………!」


「いいえ、薬で濡れてしまっているのは【表】の貴女の話。【ここ】に貴女がきたとき、間違いなく濡れてはいなかったわ。

 庭でも、私と手を繋ぎならあなたは下着を汚していたのよ。主の前で発情するだなんて、いけない従者ね」


 うまく理解ができない。

 

「嘘です……そんな嘘をついて、何が言いたいのですか、リア様……」


「だから、セラはこの人に犯されたかったんでしょう?

 ──ううん、違う。男なら誰だっていいから、自分をモノとして汚してほしかった。幼い頃にされたように、苦しむ自分のことなんて気にもかけられずに、ただ性欲を満たすための玩具として。

 そしてそんな男に心の底から屈する、奴隷になりたかった」

 

「なにを……そんな、訳が……」


 依然として否定を続けるセラ。

 だがなぜか、先程までのように、心の底から否定しようという気力が湧いてこない。

 

「思い出して。貴女がこの男に犯されていた、その瞬間を」


「あ……あ……」


 ──脳裏に蘇る、忌まわしい記憶。男が人間とは思えないほどの卑しい顔で、私を見下している。私を犯している。


 ──幼い私は嫌がった。泣き叫んだ。痛くて、苦しくて、やめてほしくて。

 

 やめてもらえなかった。奴隷なんだから、当然だ。

 セラの意思なんて関係がない。ただ主人を喜ばすことだけが存在意義の肉の玩具、人間未満の、精液便器。

 そう、言われていた。

 

「そうねセラ。あなたは嫌で嫌で、仕方がなかった……でも」


「あぁ、あぁぁぁ……あぁぁぁぁぁ…………」


 聞いてはいけない、とセラの心が叫ぶ。

 

 しかし反して、セラの理性は、むしろ歓喜に染まりつつあった。

 

 なぜならば。

 

「そんな最低な時間を、ただ、ただひたすら繰り返されて、貴女は次第に──」


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!」


 もしも。

 

 今まさにリアが言わんとしていることが本当なら。

 

「ゴミのように扱われることが──」


 自分は主人が酷い目に遭うことに喜びを覚えるような、従者失格の異常者なのではなく。

 

「──たまらなく気持ちよくなってしまったのよね」


 男に支配され、虐げられることが嬉しくて仕方がない、大好きなリアと一緒の、ただの雌豚────!!

 

  過去の記憶が強烈に、フラッシュバックする。

 

「けれど幼く純真だった貴女の心は、そんな自分の性根を心の底から嫌悪した。

 否定してしまった。だから、恐怖という虚飾を飾り付けて、心の奥深くに隠してしまった」

 

 昔、男に何日も何日も犯され続けていたセラは、泣き叫んで嫌がっていたはずの幼い頃のセラは、確かに──

 

 

 うっとりとした表情で、涎を垂らしていた。

 

 

「これが、貴女の本性」

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


 バグン、と電撃を受けたかのように、身体が大きく跳ねた。

 衝撃で、視界が切り替わる。そこにはリアも、男の姿もどこにもなかった。

 

 かわりに、バルガスが今まさに自分に挿入しようとのしかかっている。

 

「ああっ、あぁぁぁッ…………!? はぁっ、はっ、はぁっ、はぁっ……!!」


 汗でびっしょりと身体を濡らして、うろうろと周囲を見る。


 ……今見ていた景色は、夢?

 そう混乱するセラ、だが状況を整理する時間は貰えない。

 セラは心の準備をする間もなく、バルガスのペニスを中にぶち込まれた。

 

 ずぷぷぷぷぷぷううう…………ッ!!

 

「ひいいぃぃいいいいいいィィーーーーッッ♡!!」

 

 正常位の体位にも関わらず、跳ね上がるように仰け反ったセラが白い喉を晒す。

 かつてバルガスに犯されたときとは、全く異なる反応だった。

 麻薬漬けにされて複数の男達に輪姦されていたときだって、ここまで情けない声をあげたことはない。

 

「くはははは……随分と、雌らしい鳴き声をあげるようになったではないか」


 バルガスが、優越感たっぷりといった表情でセラを見下ろした。

 それを見たセラの脳裏に、さきほどのリアの言葉が蘇る。

 

 ──男なら誰だっていいから、自分をモノとして汚してほしかった。幼い頃のように、苦しむ自分のことなんて気にもかけられずに、ただ性欲を満たすための玩具として。そしてそんな男に心の底から屈する、奴隷になりたかった。

 

「くふぅ……バ、バルガスッ……!!」


 咄嗟に、セラが叫んでいた。

 

「ああ……?」


 ただの従者でしかないセラが、騎士団長たるバルガスを呼び捨てにする無礼。

 それをバルガスが咎めるよりも早く、セラは続ける。

 

「もしもッ……もしも私が、リア様を助けることを条件に貴方に服従したとしたら……!!」


「…………」


 呼び捨てにされたことよりも、話の内容が気になったのか、バルガスは黙って次の言葉を待っていた。

 

「そのときは、私のッ……私の人権は、認めてもらえるのですかッ……!!」


 睨みながら、そんなことを叫んだ。

 

「く、くくく、はははははッ……!! なにを言うかと思えば……馬鹿か、貴様」


 バルガスは、完膚なきまでにセラを見下し、


「端女風情が人間同然に扱ってもらえるなどと思っていたのか? 貴様はあの雌豚と一緒に、この俺に飼われる豚になるんだよ。

 人権だと? 貴様にそんなものはないわッ!! 勘違いするなよ、この豚がッ!!! 貴様はこの俺の、奴隷だッ!!!」

 

 ばぢゅんッ!!!

 

 そんな言葉と共に激しく一突きされたセラの身体は、刺激よりも、その言葉を聞いただけで、意志とは無関係に限界まで反り返った。

 

「んっごおおおおおぉぉおおおおおおぉぉッ…………!!♡」

 

 ぶしゅしゅしゅしゅッ!!♡

 ぶしゅううううううう!!♡

 

 びゅっ♡ びゅううっ♡

 

 ただそれだけで深く絶頂し、潮を吹くセラ。

 

「おへッ…………♡ おへぇぇぇえ…………♡」


 びくん、びくんと痙攣をはじめる。

 

 セラの全身は、リアの痴態を除き見ていたときなんて比べ物にならない程、凄まじい幸福感に包まれていた。

 

(あ…………♡ あぁ…………♡)

 

 セラはそのたった一突きで、リアの言葉が正しかったのだと確信し、歓喜に打ち震えた。

 

 確かに言われたとおり、リアとは向いている方向が違ったのだ。


 リアが男に犯されてあれだけ興奮してしまうのは、自分に価値があるからこそ。下賎な男に汚されて堕ちる高貴な自分に酔っているのだ。

 

 だとするならば、セラは。

 自分が無価値だからこそ、奴隷として、モノとして、心の底から男に屈服して利用されることで自分に価値を見出し、酔いしれる。

 

 けれどその二つは、根本的には同じことである。

 リアも、セラも。

 

 一皮剥けば、そこにいるのはただの雌。

 

 ──要するに、

 

(私は、男に支配されたいだけの、どこにでもいるただのマゾ女だった…!)

 

「わ、わが、わかりました……!!」


「くくく……なにをだ?」


「あ、貴方に従いますッ……。リア様を助けていただけるのであれば、私はどうなっても──」


 言葉の途中でペニスが引き抜かれて、もう一度ずどんと深く突き入れられた。

 ずるるるる、じゅぶうううう♡

 

「あぁぁぁあああ~~~~~ッッッ!!!♡」


 びくびくびく、びくんッ……!!♡

 

 再び絶頂してしまう。

 ただでさえ麻薬によって全身が蕩けているセラは、自身の性癖を理解したことで、唯一残っていた心の防壁すらも全て剥がされ、快楽に全く抵抗できなくなっていた。

 

 バルガスはニヤリと笑い、言った。

 

「まだ勘違いしているようだな、豚。貴様ごときが俺に従ったところで、俺の意思は変わらん。俺は俺がしたいようにするだけだ。貴様の様な豚に、そんな価値などないわッ!」


「ひぃいいいいいッ……!!♡ そんな、そんなあぁぁぁぁ……ッッ!!♡」


 バルガスは恐らく、セラのマゾヒズムを完全に見抜いた上で言っているのであろう。

 しかしそれは当然であった。

 完全に無反応を貫いていたときのセラであればともかく、今のセラは自分の弱みを剥き出しに晒してバルガスに全て委ねている、ただの雌でしかないのだから。

 

「そら、貴様はあの雌豚のことなど関係なくこれから一生この俺に飼われるわけだ。もちろんあの牝豚も俺が肉便器として飼い続けてやろう。そら、そら、そら。嬉しいか、豚女」

 

 この瞬間を最後に。セラの性根を満たすその言葉に。

 セラの理性の一切が、どこかへ吹っ飛び、消え去った。

 

 ぐりゅうう~~、ぐりん、ぐりん、ぐりん。

 ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ♡

 




「あはああぁぁぁぁああああぁぁあああッッッ!!♡ ああう、あうん、んあううぅぅぅうううんッ!!♡ んひぃぃいいいいッ!!♡」

 

 バルガスの激しいストロークに、全身を震わせ、なされるがままに身体を揺らし、悶え、悦びをあらわにするセラ。

 その心はもはや、雌奴隷としての悦びと主人への狂信的な愛に満ち溢れていた。

 

 バルガスに腰を掴まれて、何度も何度も深いストロークを繰り返される。

 

「そら、そら、そらッ……!」

 

「あうーーーーーーーーーッ!!♡ あう、あうう、んッッはぁあああああーーーーーんッ♡」


 びっぐんッ!!♡ びくっ、びくびくんっ、びくううッ!!♡

 

 宙に高く突き出したセラの両足が、足の指を開ききって、わなないた。


「そら、もう一度この場でこの俺の奴隷になることを誓え。今度は浅ましく、この俺を楽しませるようにだ。さもなくば奴隷にもせずこのまま開放するぞ?」


 雌としての悦びを思い出してしまった今、セラの心は完全に折れていた。


「あくぅぅうううううんッ♡ せ、セラをどうかっ♡、バルガス様の雌豚奴隷にしてくださいぃぃいッ……♡ この卑しい身も心もお捧げします…ッ!♡ 無価値な端女の雌豚まんこに、バルガス様のたくましいチンポでお情け、くださひっ……!!♡」


 リアの調教過程をずっと見てきたセラは、バルガスが喜ぶツボを間違えない。

 男性に対する媚び方を刻み込まれた幼い頃からの本性は、無意識のうちに主人を喜ばせる言葉を口から紡ぎだす。

 

「ふはははは、なかなか優秀なようだな、端女。もちろん、雌奴隷として、だがなッ……!!」

 

 ずちゅるっ、ずちゅるっ、ずちゅるっ!♡

 

「あああぁぁぁあッ!♡ ききききっきもちいぃですぅぅぅッ!♡ もっとぉ! もっと強くしてくださいっ! 深く、いっぱい、突いてぇぇ…………ッ!♡」


「貴様の主は誰だ」


 ぐぷうぅぅぅうううッ……!


「バルガス様ですぅぅううっ!♡ バルガス様が、私の新しいご主人様ですうぅぅうううんッ♡ あぁぁああ、凄いぃいいいいい…………!!♡」

 

 肉が、セラの秘所を貫く。身体の内側から、全身の神経が蹂躪され焼き尽くされる。

 全身から汗を吹いて弛緩し、そして敏感になった身体が、セラの脳に焼き付くような快楽と幸福感を刻み込んでくる。

 

 蹂躙は続く。痙攣が止まらないセラの肢体は、送り込まれる快楽に支配されて、仰け反りっぱなしだ。

 

「がぐっ…………!♡ ひいぃ、くああああああッ……!!♡ こんにゃぁ…………くッ…………狂ッちゃうぅぅう!!♡」 


「貴様は何だ?」


 ずるるるるるっ…………。


「あはああぁぁぁあッ!♡ メス、ブタですぅっ!♡ ご主人様の、雌豚奴隷ですぅぅぅっ!!♡ ああっもっとひてぇっ♡ 雌豚奴隷におしおきしへぇぇえっ…………!♡」


 女は例外なく救いようのないマゾだ、とはバルガスの言葉である。

 

 快感を叩き込んで、男に媚びることを覚えさせると、途端にその味にハマっていく。

 そう、あの有能且つ生意気だったリアですら、今やバルガスの言う事に逆らえない雌豚に成り下がったように。


 セラもまた、今まで心の内に封印していたマゾとしての悦びを開花させ、未知の快感に全身を痙攣させていた。

 

(支配して、支配して、私を支配してぇぇぇッ……!!♡)


 ずぶううううっ…………。

 ぐぷぅっ、ぐぷっ、ぐぷうっ、ぐぽんッ……!!

 

「んおおおぉぉおおおッ……!!♡ おへっ、おひいぃいいいいいいッ……!!♡」


 かつてとは比較にならない量の愛汁が白く泡立ち、セラの秘部からダラダラと溢れ続けていた。

 浅黒くテカったバルガスの肉棒が、じゅるじゅるとセラの恥ずかしい涎を纏いながら、容赦のない雄の動きで何度も何度も突き入れる。

 

「んひゃあぁああああっへぇえええぇえ…………♡」


 セラが、完全に蕩けた顔で悶えていた。ふにゃふにゃに軟化した肉壺は、泣きじゃくりながらヒクついて、バルガスのペニスをじゅぼじゅぼと貪り喰らっていた。

 

 かつてと比べての反応の差に、ニイ、とバルガスが優越感に口を歪める。

 

「貴様、無礼にもこの俺に手をあげたことを覚えているな?」

 

 ぐぽっ♡ ぐぽっ♡ ぐぽっ♡ ぐぽっ♡

 

「あへぇええええぇぇぇえッッ!♡ もっ、もうしわけありましぇんんんっ!!♡

 あ、あのときはっ、リアしゃまを守るためにひぃっ」

 

「黙れ。奴隷の端女風情が、言い訳をするつもりか?」


 硬い肉塊がセラの蕩けきった肉襞を嬲りまわすと、セラは「かはぁっ」と大きく仰け反り、口から涎を飛ばした。

 ビクン、ビクンと雌の足が宙を蹴る。肉食動物に捕食されている雌鹿のように、セラは身悶えることしかできていない。

 

「くひいいぃぃぃぃ申し訳ごじゃいませんんんッ……!!♡ どうかぁぁ、どうかお許しくだしゃぃいいいいッ!!♡ ご主人様の雌豚奴隷に生まれ変わったセラはッ♡ 二度と逆らいませんからぁぁぁッ!!♡」


「そんなことは当然だ。俺は今、貴様のような雌豚が、雌豚仲間を守るために、この俺に手をあげたことについて話している」


 ばぢゅんッ!♡ ぬりゅりゅううう、ぐっぷうううううッ!!♡


「んへぇええええええッッッ!!♡ 申し訳ありましぇんッ!!♡ ま…間違っていましたぁッ♡ んへぁッ……お許しくださいぃぃんッ♡ くふぅぅううう~~~~ん、お許しくださいぃぃいいいい~~~ッッ♡」


 ただただ謝ることしかできないセラは、あまりに深すぎるその快感に、完全に骨抜きになっていた。

 心の底から男に屈服して、全てを支配されることがこんなに、こんなにも、幸せなことだったなんて。

 

 おそらくもう、セラは昔の主人の姿を見ても、何も感じなくなっただろう。

 あの恐怖は、自分の身体の反応を嫌悪したセラの、自分自身への恐怖だったのだから。

 

 そしておそらくはリアのおかげで、心に燻っていたトラウマから完全に解放された。

 セラは、それによって知ることのできた自分の本当の望み、男に全てを委ね、玩具として役に立たせてもらうというマゾの悦びを知ることができた。

 

「くくくくく…………いいだろう、だがそんな無礼な端女にこうして情けをくれてやっているんだ、何か言うことはないのか?」

 

 心の内に封印されていた本当の望みをこうして甘受することができたセラは、脳内をじくじくと幸福感で溶かしながら、新たなご主人様に悦び悶えてしがみついた。

 

「ああありがとうございますぅぅぅッ!!♡ 雌豚奴隷のセラに構ってくだしゃって、ありがとうございましゅっ!!♡ こんなに気持ちよくしてくださって、ありがとうごじゃいまひゅっ!!♡ ご主人様のたくましいおチンポに気持ちよくしていただきっ、セラ豚は幸せですっ!!♡ ご主人しゃまっ♡ あああ、ご主人様ぁぁあぁ~~~~ッ!!♡」


「くはははははッ……!! そうだ、それでいい。それこそが正しい、雌豚の態度だッ!!」


 ずりゅりゅりゅりゅ……ッ!! ばちん!!


「んへぇぇえええええええ……!!♡」

 

「さて、そろそろ──本気で動くぞ」


「あへぇぇぇぇ…………んへぁあぁあッ…………!?」


 快楽の海に揺蕩いながら、呆けた声を出した。

 本気で動くという言葉を上手く認識できない。

 

 巨根だからなのか、それとも目の前のご主人様にテクニックがあるのかはわからないが、バルガスの部下達に輪姦されていたとき以上の快感を、既にこれ以上ないほどに味合わされていたから。

 

 しかしセラの理解が追いつくよりも先に、バルガスの腰が激しく動き出した。

 

 ずぱんっ♡ ずぱんっ♡ ずぱんっ♡ 

 ぐりぐりぐりいいぃい~~~ずるるるッ、ずぶぶぶばちゅんッ!!♡

 

「きゃひいいぃいいいいいッッ!!♡」


 そして即座に理解する。今このときまでわかっていなかったが、ここまでは単調にしか動かれていなかったことを。

 そう、一定のリズムで、ゆっくりと抜き差しされていただけ。

 

 確かに今にして思えば、部下達はもっと乱暴に自分を犯していた。今、ようやく同じことをされはじめたのだ。

 部下達よりも長くて、深くて、強いストロークが、激しくセラの蜜壺を掻き混ぜる。

 

「ひいいいぃぃィィーーーーーッ!!♡ い、いいれしゅぅううッ! はああーーーッ! んへぁっだめ、だめ、だめ、だめ、イっ、イクっ、セラ豚イキますぅっ!♡ イッちゃいますぅ、ご主人様っ♡、ご主人様ッ♡、ああ、好きっ、大好きぃッ♡ 愛していますぅッ♡ ご主人さまぁあああッ!!♡」

 

 狂ったように髪を振り乱して悶えるセラ。たまらずぶしゅ、ぶしゅっと潮を噴き出している膣に、何度も何度も容赦のない抽挿が繰り返される。

 亀頭が子宮口に密着し、バルガスが尻を回すように動かすと、亀頭に捕まった子宮がひしゃげるほどの快感を送り込まれた。

 

 人生観が変わるほどの強烈すぎる快感に、セラは白目を剥いて悶絶した。

 

「ああっ、あっ♡ 駄目ですぅっ、イ、イクっ!♡ んああああぁぁイキますぅぅうううッ!♡ ひあああぁぁぁあああぁーーーッ! あぐうぅぅぅぅぅんぁあああああああーーーッ!!♡」


「いいだろう雌豚ッ!! 無様にイケよ……!!」


 ゾクリと、身体の芯が震えた。

 

「あっひぃいいぃぃぃぃいいいいぃィィ…………ンッッッ!!!♡」


 汗だくになった身体を、ぴいんと反り返らせて、セラは絶頂を迎える。

 

 しかし、バルガスの動きは止まらない。

 余韻に浸る間もなく、絶頂によって収縮する膣壁を、逞しすぎるペニスのカリがぞりぞりと引っ掻きながら、何度も何度も、子宮を叩いていく。

 

 ずぱん、ずぱん、ずぱん…………!

 

「あきゃあああああッ…………♡ ひ、おごっ…………!♡ やめっ…………し、ぬぅ………死んじゃいましゅっ…………ご主人しゃまッ…………!♡」

 

 息が止まる。舌を突き出しながら唾液を撒き散らして乱れる。

 視界はチカチカと閃光が点滅している。正直、何も見えない。

 

「知るか。覚えておけよ、端女」

 

 バルガスがセラの言葉を一蹴する。

 

 ──ああ、そう、そうなのだ。私はモノ同然の奴隷だから、死んだって構わない。そう扱われなくちゃいけないのだ。

 

 ゾクゾク……♡

 

 ばちゅんっ、ばちゅんっ、ばちゅんっ!

 

「…………んひぃぃぃ…………ッ♡ …………うあぁぁ……あぐうッ…………♡」


「貴様はもう、この俺の所有物だ。何をするにも俺の許可が要る。その命すら俺のものだ。俺が死ねと言ったら死ね。なに、心配はしなくていい。そういう命令にも喜んで従うマゾ豚に調教してやるからな」

 

 ゾクゾクゾクゾクッ…………!!♡


 想像が出来てしまう。セラはすでにそう調教されてしまっている。セラの白い視界には死ねと命じられただけで感極まって絶頂する自分の未来の姿が鮮明に浮かんでいた。


 ずるるるるっ、ずぶぶぶぶうううっ!

 ずぶっ、ずぶっ、ずぶっ、ぶちゅん!!


「…………ふぐっ…………はい、ごしゅじんさまッ…………♡

 うぐ、イ、グ…………ぐぎゅッ…………♡ セラ、いぎまふぅう゛…………」


「忘れるなよ、貴様はこれから俺の肉便器だ。貴様らに人権などありはしない。貴様が守りたがっていた雌豚共々、奴隷として可愛がってやる。喜べ、豚」


 ゾク、ゾクッゾクンゾクン…………!♡

 

 ばちゅっばちゅっばちゅっばちゅっ!

 

 乱暴に、力強い挿入がひたすら機械的に続けられている。

 身体の水分が枯渇してしまうのでは、と思うほどに愛液を分泌し続けて絶えることなく快感を送り込まれるセラは、もう絶対に昨日までの自分には戻れないだろう。

 

 ゴミ同然の雌奴隷として支配される悦びを、思い出してしまったから。


「それを理解したら、俺から目を逸らさずに、俺に感謝しながらそのままもう一度イけ。命令だ」


 小刻みに痙攣するセラは、已の主人からの命令に絶対に逆らわないという強い意志を持って、バルガスを見つめた。

 極限まで悦びに満たされた身体は、再び絶頂を迎えようと昇り続けている。

 

 ぐぷうううっ!! ぐぽおっ、ぐぷ、じゅぶうううッ!!

 ぱんっぱんっぱんっぱんっ!! ずぶぶぶぶぶううううッ!!

 

「ごしゅ、じん、さまぁぁぁぁ…………♡ あっ……んあぅんッ…………♡ …………あああッ…………あああぁぁぁぁああ…………ッ!♡ 偉大なっ♡、バルガスさまぁぁぁ…っ!♡ あひっ! あひぃぃぃいいいーーーーーーーッ!!!♡」


 天にも昇るような心地で全身を包む幸福感に蕩けながら、セラは再度の絶頂を迎えた。

 ガクガクと痙攣する度に下半身からは潮を吹き続け、興奮のあまりセラの鼻腔からは鼻血が一滴頬をつたう。


 絶頂に既に意識を手放しているにも関わらず、与えられた最初の命令を順守すべく、爛々と輝く双眸は新たな主人をいつまでも逸らさず見つめ、うっとりとした表情で、涎を垂らしていた。


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